(その1)
                         
                        ・・・実は意外と単純な動機でした・・・

 もう、何年か前のことですが、
『失敗しないリフォ-ムQ&A』という雑誌に記事(広告?)を載せてもらった時のことです。その雑誌を見た

若いご夫婦が「中古マンションのリフォ-ムをしたい。」と訪ねてきてくださいました。正直言って感激しました。なにしろ雑誌に原稿載せても

らったのは初めてだったし、ずいぶんたくさんの設計事務所が一緒に載ってたのに自分が選んで貰えた!もう、舞い上がりました。

 引越し予定日を伺うと工事日数ギリギリ、下手すると間に合わないかもしれない。住宅設備(ユニットバスなど)の納期は大丈夫だろうか? 

気持ちは舞い上がったままでしたが、顔は少々引きつりぎみ・・・「図面描いて打合せして工事の施工業者決めて見積もり取ってなんて悠長

なことしてられない。」 「そうだ、このまま突っ走れ、自分で工事までやってしまおう。」

私の頭のなかでスイッチが切り替わりました。もちろんご夫婦の了解を頂いての事でしたが、設計事務所のメニュ-追加!「にわかリフォ-ム

店?」誕生の時でした。


 今までは設計図を描いて工事現場の施工状況を監理していた人間が突然工事を始めた訳ですから気の廻らないことも多くってバタバタ駆け

ずり回ることもしばしばでした。端から見ていて危なっかしいと思ってか、住設メーカーの方はじめ工事関係者の方々からアレヤコレヤと救いの

手が差し伸べられまして何とかやり通せました。


 いよいよ引越しの前日、最後のル-ムクリ-ニングは自分でやると決めていましたので朝からホウキ、ハタキ、モップ、雑巾、バケツ、ワック

ス、ガラスクリ-ナ-etc・・・せっせと車に積み込んでおりました。そして、「アナタ、たまにはそれくらい気合入れて自分の仕事部屋の掃除して

みたら!!」とウチの奥サマからのキツ~イ声援?を背にイザッ出撃・・・。

 現場はすでに主だった片づけは終わっていましたが、壁、床、天井、窓ガラス、ホコリだらけです。ハタキをかけてホウキをかけて雑巾がけ、

そして窓ガラスを磨きあげて・・・このあたりで私、かなり息が上がっておりまして、普段箸か鉛筆くらいしか重いもの持ったことのない設計屋の

オッサンの情けなさを痛感イタシマシタ、ハイ。


 ともあれ、床にワックス掛けて最後に乾拭きしてやっと終わったと思った頃にはもう外は暗くなってました。

「間にあったぞ~」あらためて部屋の隅々を見て回りました。何度も何度も見て回りました。今まで自分の現場をこんなにまでイトオシク感じた

ことあったろうか?と思うほどその場を立ち去りがたくやっと家に帰り着いた時には夜中の11時近くになってました。


 今、思い出すと「いい年したオッサンがずいぶん青臭い気分に浸ってたなあ。」とも思うのですが、設計図描いてるだけじゃあ「アノ気分」は味

わえません!ク・セ・ニ・ナ・リ・ソ・ウ・・・

                                  -おわり-

                 以上だけで終われれば、まあ ちょっとイイ思い出話なのですが

                                  (その2)


 ちょうど上記の物語よりも少しばかり前から私は、本業の傍ら岡崎市の行っている木造住宅の無料耐震診断の診断員としていろんなお宅

の地震に対する安全度調査を重ねていました。そうした中、すでにリフォ-ム済であるというお宅を何軒も拝見いたしました。そこで、重大なこ

とに気付いたのです。センスの良し悪しは別として「ちゃんとしてる仕事」と「ちょっと待てヨ!」という仕事との割合が、3:7くらいだったのです。

これにはたいへんな驚きでした。たまたま私が担当したそれぞれのお宅だけがそうだったのでしょうか? 

答えは「ノ-」です。思えば当時悪徳リフォ-ム事件の記事が新聞に始終出てました。「本当にこう言う事ってあるんだ・・・」というのが実感

でありショックでした。

 
            私自身が実際に見た事例の一部を『怒りの激情に駆られるまま』にお伝えします。

・ ほとんど無意味な金物やボルトをめったやたらと取り付けた耐震?工事。肝心な基礎や耐力壁の補強は一切なし。

・「付けりゃいいって物じゃないだろう。」と言いたくなるような効果が疑わしくしかも恐ろしく高額な床下換気扇。

・シロアリ駆除の名の下に床下に潜り自分の通り道を作るために建物にとってもっとも大切なコンクリ-ト基礎にボコボコ穴を開けまくって行った

 シロアリ業者(基礎の破壊は大地震の時に家の倒壊を招く、家にしてみればコイツらこそシロアリに勝るとも劣らない害虫ナノダ!)、

・外壁リフォ-ムと言うことでトタン板を張り替えたのはいいけど、ご丁寧に外周基礎の床下換気口まで塞いでいった馬鹿者

 (土台や床組を腐らせる気か!)・・・ 。


 「いったいこのようなリフォ-ム工事の世界ってのはドウナッテイルノダ!およそ建築の世界に身を置いてしっかりした知識や技術のある者の

仕業とはとても思えない。」どれもやってることがシロウト以下です。そのくせ、人の不安感を煽りたて脅しまくって法外な工事費を突付けていま

す。

 それに対して全体的に「しっかりやってあるなあ。」と思えるリフォ-ム工事はたいてい地域に根付いてる工務店の仕事がほとんどでしたが物

件数としては本当に少ないのです。これはどういうことなのでしょうか?多分、簡単に言ってしまえば『リフォ-ムの相談窓口が少なすぎる

(あるいは目立たない)のではないか』と思います。 工務店も私たち設計事務所も新築物件のほうにばかり目を向けて、こうしたリフォ-ム

関係の仕事を重視してこなかった。その結果、家を直したいと思う人々が相談相手を見つけられずに得体の知れないような飛び込みの営業

マンの言いなりになってしまったり、価格の安さばかり謳った(例えば、システムキッチン、ユニットバス、シャワ-トイレなど設備機器単品の

値引き価格ばかり強調して全体的な取付け工事費等には一切触れていない。)チラシや広告に飛びついてしまっている。これが現実のよう

です。工務店や設計屋はもっとこうした相談に対して積極的に耳を傾けるべきでした。 

 

 話がはじめの方にもどりますが、リフォ-ムというこの仕事、実際やってみるとケッコウ楽しかったです。とにかく喜んで頂けますからね。

私たちはリフォ-ムという言葉で簡単に表現してますが、家を直す、使いやすく改造するということは、そのご一家にとっては暮らしぶりの快

適さ、幸福感に直接深い影響を与えます。なかなか責任も重いですが工事の結果得られる満足感やメリットの大きさを評価していただける

仕事として私にはなかなか魅力的です。




一級建築士事務所による 住宅・マンション
     リフォ-ム工事です

 
 今までに掲載してもらった雑誌です

      設計事務所がリフォ-ム工事を始めた理由

 







                                                                 
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